「Blindfold〜目隠し〜」 


黒くて長いコートは「動きにくそうだよね?」
返った来た答えは「別に・・」
いつになく暗い瞳に「何かあったの?」
呟く瞳は揺れるのに「何もない」
つい訊いてしまうの「ほんとう・・?」
眼差しが困惑を伝えてる。あなたの瞳は雄弁。
誤魔化すのって好きじゃない 私はあまり上手くない。
あなたは隠すのが得意みたいに思い込んでるけどそうじゃない。
ちっとも隠せてないのはお互い様かな。
今日はなんだか二人ともちょっと変。

上手く言葉が紡げなくて「どこかへ闘いに行くの?」
黙っているのは私に説明するのが嫌だから?
「早く帰って来てね。待ってるから。」
「待たなくていい。帰れ。」
やっぱりどこかへ行くんだね、私を置いて。
ふと涙が込み上げてしまうけど堪えて笑う。
「うん・・・でも少しだけ待ってる。いいでしょ?」
「・・・あまり遅くなるなよ。」
「うん、わかった。」
「じゃあな。」
「え、もう行っちゃうの?」
私は追いすがろうとした。独りになりたくなくて。
「・・・戻ってくるから心配するな。」
「ほんとにほんとだね?!約束だよ。」
「ああ、誓ってもいい。」
「神様に?」
「そんなもんじゃねぇ・・おまえにだ。」
「帰って来てね、ほのかのところに。」
何も言わないで私の傍へと近づくあなた。
私の泣きそうな顔が黒い長いコートに隠された。
「泣くな。おまえのとこに帰るから。」
「うん。わかった。待ってるからね?」
黒い視界に涙が零れたけど見えないからいい。
そう思ったのにいきなり目の前が明るくなった。
あなたの顔がとても近くて少し驚く。
今度は長くて黒いコートは私のことを隠すように包んで。
私の唇もあなたのそれで隠される。
このままあなたに全部包まれていたい。
そう思ってもじきに離れて寂しい。
それでも唇を通してあなたの温かさを感じられたから
「行ってらっしゃい」って言えた。
「ああ。帰ったら続きだ。」
「何の?・・・オセロ?」
「違う。」と言った口元が少し笑ってる。
「わかんないけど待ってるね?」
「ああ、待ってろ。」
「うん。」
私は微笑んだ。約束したからもう泣かない。
あなたも笑ってくれた。とても優しく。


行ってしまった部屋は随分広く感じられる。
このままあなたが帰るまで待っていたいと思った。
待っていようかな、お母さんに電話して。
怒るかな、ここで待ってたら。
あの黒いコートでまた包んでもらうの。
温かいキスもまたしてもらうの。

「早く帰ってきて・・」

部屋のあちこちに残るあなたの居た気配。
あなたとたくさん過ごした場所。
独りではダメだと思う、二人で居なければと。
やっぱりまた涙が出そうになったけど耐えた。
目隠ししてみた、自分の両手で。
もしかしてあの黒いコートはあなたのことを隠してたの?
あなたのなかの優しさや他にも色んなことを。
隠さなくていいのに、私にはわかるんだから。
隠していいのは私だけだよってお願いしてみようか。
困った顔が目に浮かぶ。色んな表情を思い浮かべてみる。
どれもみんなあなたの心。
大事に抱えて仕舞い込んでいたい。
私の大事な宝物。
私にはあんなコートはないから隠し切れない。
だから隠さない。照れてあなたが怒っても。

「あなたが好き・・」

帰ったあなたに伝えるの。
知っててもね、言いたいの。
どんなに隠そうとしても隠せない心。

「傍に居させて・・・」

祈るように呟いた。







ちょっと珍しくしっとり系?!帰ったらほのか食われるかしら?(笑)
ハーミットのコートでほのかを隠すっていう萌えなシチュを一度
書いてみたくて頑張ってみたのですが・・うーむ・・?!