「バカ×バカ=?」 


なっちがおかしい。
っていうか怪しい。実にイカンね、けしからん。
ほのかは基本なっちのことわかったと思ってたけど
違うのかな?それじゃイヤだよ、わかっていたい。

でもなっちはかわいい。
弟みたいな、妹のような・・そこら辺は曖昧だ。
ほのかはあまり女の子っぽくないから、かな?
普段も男の子って意識は誰にも持てないでいる。

「なっちー!細かすぎるよ、女の子よりヒドイよ?!」
「うるさい!適当すぎるんだよ、お前のやり方が!!」

一緒にオヤツを作ってると時々、ううんいつももめる。
分量をちゃんと量れだの、あーだこーだと実に面倒くさい。
「男のクセに」っていうとすごく怒る。当たり前か。
「性別関係ない」とも。うん、それは正しいと思うけどさ。

なっちは女っぽいと言われるのが特に嫌いらしい。
顔のせいだよ、仕方無いよと慰めたらむすっとされた。
ヘンなの。綺麗な顔に不満だなんて在り得ないよ、贅沢者。
性格もいじいじしてて女っぽいとか言ったら更に怒るんだ。
そやってすぐに怒るのだって女の子みたいじゃないか。

だけど、だ。学校にはもっとメンドクサイ女の子が居る。
やっぱり実際の女の子とは違うな、ってそれはわかってる。
女の子も嫌いじゃない。でもってなっちも嫌いにはなれない。
すごくほのかと違うとこでも「かわいい」って思えるから。

「・・・顔になんかついてるかい?」

なっちがむすっとした顔でほのかの顔を捉えてじっと見る。
おかしい。「別に」とか言ってフイっと離れてしまうんだ。
怪しいと思うようになったのはその後のなっちの発言から。

「ワカラン」

ってそれだけ。意味がわからず尋ねてもはぐらかされる。
ふぅと溜息まで吐かれたらどうしたって気になるよね!?
ほんとにヘンだ。一体全体どうしたんだろうと考えてみる。
学校で誰かが溜息を吐いてたときのことを思い出して訊いてみた。

「なっちってさ、女の子のこと好きになったことある?」
「・・・・なんでそんなことを訊く?」
「質問で質問を返すのって失礼だって言われたじょ!?」
「お前のが余程不躾だろうが。答える義務はない。」
「・・なるほど。それもそうか?」
「お前は兄キ以外に無いだろうが。」
「フンだ。ほのかだってそ・・・・」

心当たりを探していたら鼻で笑われた。すごく不愉快なのだ。

「なっちだってお年頃だからそういうのかと思ったけど、無いね!」
「そりゃどうも。お前にそんな心配されるとはなぁ!?・・ったく・・」
「かっこつけたってなっちが無駄にもててるだけって知ってるのだぞ。」
「だったらどうだって?!ガキがしょうもないことに気ぃ遣うな、バカ!」
「口の悪い子だねぇ!バカって言うな、言う方が馬鹿なんだじょ!」

いかんいかん、ほのかってばついつい悔し紛れにまた・・・
しかしなっちだってイカンのだ。年上とは思えないほど子供っぽい。
むきになって言い合いになるとよくそう思う。ちょっと嬉しいけど。
無理してやせ我慢してるなっちより、子供みたいな素直なところが

スキだから。

「・・・?急に黙るなよ、どうした?!」
「あ、いや・・なんでもない。なんか急にキたんだよ。」
「きたってなにがだ?ワケのわからんことを。」
「ワカランわからんって人をなんだと思ってるのさ!?」
「・・・な・・」
「心配して悪いかい!?気になるものは気になるんだよ。」
「俺がワカランって言ったことをそんな気にしてたのか。」

ほのかがむすっとしたなっちみたいな顔で腕を組んで睨むと
反対になっちは怒り顔が消えていつもの優しい素顔に戻った。

「別にお前に心配されるようなことは無いから気にするな。」
「じゃあどうして溜息吐くの?ほのかに何か言いたいんじゃない?」

当たりだったんだろうか?なっちは言葉を飲み込んだように見えた。
なのでほのかもなんとなく不満顔を忘れて腕も解いてしまった。

「ほのかだって色々考えてるんだよ、バカバカって言わないで。」
「・・・・悪かった。」

素直な返事と表情に免じて許してあげよう、単純にもそう思う。
なっちは確かにメンドクサくてうるさくて気にしいでいじけ虫だけど
ヘンでもいいよ、カワイイし。スキになってしまったらどうでもいい。
細かいことは許せてしまうものだよね。ほのかだけじゃないといい。
にっこりと笑ってみせると、なっちは途端に安心した顔になる。
そこがまたカワイイんだ。ほっとけない子だなって思ってしまう。

にこにこしてたらなっちが近付いて、さっきみたく顔を掴まえた。
間近で見るなっちは確かに女の子そっちのけの綺麗さで見惚れちゃう。
ついついぼけっと見てしまってなっちがふぅと溜息を吐いて我に返る。
のがいつもなんだけど・・・あれ?・・離れていかないね?

「なっちはなにがワカンナイの?ほのかに訊けないこと?」
「訊いたってしょうがないことだ。」
「訊いてみればいいじゃん。遠慮してるわけじゃないんだよね?」
「答えはわかってるんだ。お前はきっと『いい』って言うだろ。」
「ならいいんじゃ・・?ほのかやっぱりバカかな?難しいかも。」
「バカじゃない、俺の方がよっぽどかもな。」
「??・・それにしてもこんなに近いとなんだかドキドキする。」

話すと息が掛かりそうで、小さい声で言うから余計思うんだろうか?
緊張もしてる。だけど嫌でもない。なっちはなんでほのかを見るのか
答えを知りたいからかもしれない。じっと動かずになっちを待ってる。
はぐらかされる度にがっかりする。なっちと同じで「ワカンナイ」だ。

「ホントにわからないのか?普通こんなことされたら怒るはずだろ?」
「怒る!?・なっち以外にこんなことする人いないからなぁ・・・?」
「いたらそいつのこと蹴り上げて逃げろ。で、俺が止めを刺しに行く。」
「ぷはは・・もしかしてそんなに失礼なことされてるの?ほのかって。」
「当たり前だろ。怒れよ、怒っていいぞ。」
「でもって蹴って逃げるの?ヤダよ、そんなことしないよ。」
「しないのか・・やっぱりな。」
「逃げて欲しいの!?えっ!ちょっとびっくりだよ。」
「怖くもなんともないか?俺のこと。」
「なっちだもん。怖くなんかないよ。」
「あっさりだな。案の定ってヤツだ。」
「ヘンだよ、なっちってば。」
「うん、ヘンだな。」
「それはいいんだ?怒らないんだね。」
「ヘンだってくらい可愛い。お前が。」
「・・・んん?怖がるとこじゃないよね?」
「引くくらい可愛い。バカじゃねぇのってくらい。俺はマジでおかしい。」
「えっと・・えと、なっちさん?あの〜・・もしもし?」
「お前にここまで惚れるっておかしいだろ!この俺が、女なんかに。けど」
「女がダメでも、ほのかなら大丈夫なんでしょ?」

そう言ってみた。驚かない。だけどどこか苦しそうだ。

「そうだ、なんでお前にって思うが、お前じゃなきゃ在り得なかった。」
「うん・・嬉しい。ほのかもねぇ、似たようなこと思ってたんだ。」
「似た?」
「なっちがカワイイ。ほのかダイスキさ。でも他とちょっと違う。」
「カワ!?」
「まぁまぁ、怒らないで?かわいいっていうか、なんだろ、特別?」
「・・・・」
「なんか、なんかね、なんとなくずっと一緒にいる気がするんだ。」
「そうしたいのかなって最近は考える。スキだけどなんかこう・・」
「お前も探してたのか。」
「あ!うん、そんな感じ。なっちかしこい。答えはわかんないけど。」
「そんなことはどうでもいい、そんな感じだろ?」
「あはは!?なんだぁ、なっちもだったのかあ!」
「嬉しいのか?」
「嬉しくない?」
「いいや。」
「素直だねぇ、最近。いい感じだよ・・!!??」

「ちょっ・いまっ!えっ!?なんだい突然にっ!」
「マジでなんも解ってなかったんだな・・すげぇ;」
「わわか・わかっわかんないよ!そう言ったでしょ!?」
「言ってねぇ。それは俺の台詞だ。」
「そうだっけ?わ〜もうなんか・・混乱してる!」
「今のはちょっと試しただけだ。煩いから黙れ。」

ほのかは顔を掴まれたまま、黙らされちゃったよ・・ヒドイよね。
なっちは何度も何度もするんだよ。けどわかってよかったな。
予感は正しかったんだ。ずっと一緒にいようね。ちゅーも好きなだけ
すればいいよ、って言ったら。「そうする」って可愛い返事がきた。







バカ×バカ=らぶらぶv