「ありがとう」 


「やめろ!と言ってるのが聞えないのか!?」
「遠慮しなくていいってば。」
「遠慮してんじゃねぇっ!」
「んじゃ、させて。」
「するな。」
嫌がるだろうなって思ってたけど、やっぱりそうだった。
めげずに目の前にあった首に手で引き寄せるようにして顔を近づけた。
「やめろって!」
口では怒ってる風でもなっつんはほのかに乱暴はしない。
あ、多少はその・・拳骨とかぐりぐりとかあるけどそれは置いといて。
基本的にほのかの自由にさせてくれるし、わりとわがままも通してくれる。
そのときも私を無理にどかそうとしないのでいいんだろうと思った。
だってなっつんが本気出せばほのかなんて簡単にかわすことができるだろうし。
だけどほのかからのキスは叶えさせては貰えなかった。
閉じていた目を開けると少し怒ったような顔が飛び込んできた。
「・・・どうしてダメなの?」
口を尖らせて上目遣いで睨みつつ、恨めしい声をも持ってして抗議してみた。
いつもなら『うるさい』とかで明確な答えは返ってこないのだが珍しく違った。
「・・・いらないからだ。」
いつになく真剣な口調で呟かれた答えに、ぐさっと胸を抉られた。
「キスがいらないの?それともほのかだから要らないってこと?」
「・・そういうことじゃねぇ・・」
眉間に皺寄せて、低い声でなっつんはそう言った。
「んじゃどういうことさ?」
「・・・こんなこと・・普通兄妹ではしないんだよ。」
「・・?だって・・兄妹じゃないじゃん。」
「・・・」今度は悲しい顔を見せるなっつんにほのかは尋ねてみた。
「このままでいたいってこと・・?これ以上好きになっちゃダメなの?」
「・・・そうだ。」なっつんはとても苦しそうに肯定した。
やっとわかった。なっつんはいつまでも妹さんと居るみたいに思っていたいんだ。
私が「妹」以上じゃダメってことだったんだね。・・・それでそんなに困ってたのか・・・
理解はしたけれど相当堪えた。言葉が出てこなかった。ものすごくショックで。
私は泣いたりはしなかった。ただ呆然として行き場のなくなった想いを持て余して俯いた。
黙り込んだ私を心配そうに窺うなっつんに気付いたけどなんて言っていいかわかんなくて。
「ほのか・・大丈夫か?」
「・・う、うん・・・ううん、あんまり大丈夫じゃない・・・!?」
私が俯いていた顔を上げるとなっつんと目が合った。綺麗な瞳が心なしか潤んでる?
少しの間、何をされたのかわからなかった。あんまり一瞬だったから。
でも確かに頬になっつんの唇が触れていった。感触もなにもよくわからなかったけれど。
「あ・あれ・・?なんで!?」事の成り行きがよくわからず、私は頬を押さえておろおろした。
「唇も頬でも・・腕でも・・どこでもおまえはとにかくオレに気安く触るな。」
「??なっつん今ほのかにキスしたじゃん!なっつんはいいっての!?」
「いいんだよ!」開き直ったような言い方にカチンとくる。意味がわかんない。
「どーいうことさっ!?」
「おまえは・・無自覚過ぎんだ。妹だと自分に言い聞かせても・・抑えられなくなる。」
「へっ・・?!」
「ちっとは警戒しろよ、おまえも一応女だろうが!」
「わけがわかんないよ。なっつんは『妹』で居て欲しいんじゃないの?!」
「おまえがそう・・触ってきたりすると思えなくなるって言ってんだよっ。」
「なんで?」
「なんでって・・・はぁ〜・・どう言やいいんだ・・?」
「ほのかはなっつんのこと『お兄ちゃん』だなんて思えないもん。どうすりゃいいの!?」
「!!・・や、だから・・その・・;」
「『妹』だって思ってていいよ。だけどほのかは好きなこと止められないの。わかった!?」
「何無理矢理納得させようとしてんだ。オレだってなぁ、困って・・・んだよ・・」
「なっつんからはキスしてもいいってのは!?どういうこと?」
「オ、オレはその・・自覚あるから・・自制できてるときしかしない・・ってことで・;」
「???・・・もう少しわかりやすく言ってくれないかな?」
「〜〜〜だからっ、おまえからそう無闇に迫られるとヤバイってことだよっ!!畜生。」
「・・・ほのかなっつんに迫ったりした?・・ほのかが触るだけで困っちゃうの?」
「だから無自覚!・・・・そうだよっ。もう知るかっ・・」
「何真っ赤になってんの?ほのかそんなつもりは・・え〜っと・・あれ?『妹』の立場は?」
「それを必死で護ってんのがわかんないから怒ってるんだよっ!!」
「・・・ほのか振られたのかと思ってショック受けてたんだけどさ?もしかして・・違うの?」
「もう知らん。勝手に言っとけ。」
なっつんはその後何を聞いても答えてくれなくなって、一生懸命お願いしてみてもダメで。
「ねぇねぇ・・これだけ。コレだけは言わせてよ。なっつん、なっつんが好きだよ?」
「・・・・知ってる。煩ぇから黙れ。」
「そっか。知ってたのか!?よかった。ありがとう、なっつん。」
「何に礼なんか言ってんだ・・?」
「いつも好きって想ってたこと伝わってたんだね。嬉しいからお礼。」
なっつんはぽかんとした顔した後でまたまた真っ赤になって口をぱくぱくさせた。変なの?
でもって「フンッ!」ってそっぽ向かれてしまったけど、今回はまぁよしとしよう。
私は嬉しくなってまたいつものようになっつんにもたれかかって怒られたんだけどね。






うわ・・・久しぶりの更新〜!ってか恥ずかしい。いつも以上に恥ずかしいもの書いた!
ような気がする。気のせい?!やーね、気のせいだわvきっと。(自ら誤魔化し)
2008年の初回小説からして恥ずかしくてごめんなさい。(反省はしてません)^^