暗夜行 


憎まずにいられなかった
貪欲な己を知っていたから
憎いと思わなければ辛過ぎた
心が壊れてしまいそうで

逃れられないなら
触れるべきではなかった
夜の闇に紛れても
出口など見つからない

其処には何もない
虚無が広がる空の狭間
見てきたという人は言った
ああ そうだ 知っていた
何もかも失くしたからこそ
おまえが全てであった故に

おまえのために生きてると
それだけを確かめたくて
誰も見ないと言い聞かせて
幸せに埋もれたくなくて
おまえのためだけに生きたかった

だから誰も愛したくなかった
必要なものじゃないと信じた
あらゆる努力も細心の注意も
嘲笑うように容易く踏みにじられ
そうさせたオマエを憎んだ 

欲した己自身を省みず

記憶を埋もれさせたくなくて
思い出なんてつまらないものにしたくなくて
今でも昔のように「妹」が居ると信じて
もういないのだと理解したくなくて

けれど 手を伸ばした

この腕を切り落としても
もうオマエを抱きしめた記憶を消せない


山奥の隠れ家の一つに身を潜め
何も考えずに只管身体を虐めても
帰る巣を失くした鳥のように
戻れない 疲れ果てても
空っぽのオレの中には
やはりひゅうひゅうと風が吹いていた

月明かりの夜は堪らない
星の明かりも要らない
鼓動だけが空しく響く
ここには何もないのだと

残してしまった 鍵
捨ててしまうはずだった
川にでも 海にでも
この森の奥深くにでもよかった
朽ち果てさせるべきだった
どうしても できなかった

妹の夢を見ない
逢いたくてたまらないのに
「強くなる」誓いを果たせない
そんなオレは許されないだろうか
打ち付ける拳の先に浮かぶのは
「弱い」オレ自身

どうすれば強くなれる?
この何も無いオレが
















疑問に思われた方のために少し補足です。
「おまえ」と「オマエ」は別人です。
「楓ちゃん」と「ほのか」です。
ややこしくてごめんなさい;