兄の決意



「いや、だからね?僕も毎日忙しいからさ。」
「・・・・」
「それに僕と違って君は成績も抜群だし。」
「・・・・」
「申し訳ないなとも思うんだけど、やっぱり」
「・・・・」
「妹が君がいいって言うんだから仕方ないだろ?」
「・・・ほー・・・」
「やだなぁ、そんな顔しちゃって!」
「案外君は優しいし、よく遊んでくれるって聞いてるよ?!」
「そいつは・・・可笑しな話だな・・」
「僕だって君だからこそ信頼して預けてるっていうか・・」
「だから?」
「君にそんな苦情を言われてもどうしようもないっていうか。」
「おまえ・・・妹のことホントに考えてんのか?!」
「んー、というか、君だからまぁいいか!みたいな。ねっ!?」
「何がいいんだよ!?オレがどんだけ苦労してると思ってるんだ!?」
「そ、そんな大声出していいの?ここ、学校だよ?」
「人の気配なんざねぇよ!そんなこともわからんのか?!」
「あ、そう。うん、そうね。けど気配を殺してるってこともあるし・・」
「とにかく、あいつの面倒みてやってることはともかく。」
「あ、それはいいんだ・・」
「と、ともかく。泊まりに来るっていうのは止めろよ、兄として。」
「でもほのかすごく楽しみにしてるよ?お泊りグッズも見せてもらったし。」
「怒るぞ!」
「もう怒ってるじゃん。なっつん2号とかいうぬいぐるみもあったね。ぷぷv」
「・・・もうここで死んでおくか?」
「なっつん、おやすみvなんてキスして抱いて寝てるんだよ、毎晩。どう?どう?!お安くないねぇ!」
「エロ親父みてぇなこと言ってんじゃねー!!」
「母さんも君のこと気に入ったみたいだし、公認だなんて憎いね、この、このぉ!」
「だからって泊まりに来ていいなんてオレは一言も言ってねぇってんだよ!」
「別に一緒の布団に寝ろって言ってるわけじゃないし。」
「あ・あったりまえだ!!何考えてんだ、おまえ・・・!!!」
「・・顔めっちゃ赤いよ、夏くん?」
「だからさ、両親も一人ほのかを置いて出張は心配だと言ってるし。」
「おまえが修行を休んで家に帰ればいいだけのことだろう?!」
「ほのかが君んとこがいいって言うから母さんを説得しちゃったんだってば。」
「おかしいだろ?おまえんとこの親!!」
「君が優等生ぶりっこして挨拶とかしたから信用したんじゃない?僕の親友だって言ってあるし。」
「・・・・だからって、泊まるって・・どうすんだよ・・・おまえら何も心配しないのか?」
「何を?君がほのかに無茶をするとは見てる限りあり得ないしさぁ。ほのかだって・・」
「兄が言うのもなんだけど、まだ色気とか全く無いしね!」
「・・・・おまえ・・・仮にも中学生だろ・・?」
「はっ、それとも君はまさか幼い子が趣味という、あの有名なロリ・・」
「死ね!」
「はうっ!危なかった・・ふーっ!」
「てめぇの妹を馬鹿にすんのもオレを変態扱いすんのも止めろ!」
「うん、ごめんごめん、冗談だよ。そんなこと思ってないから。」
「どうしても止めないつもりか・・?」
「そうだね、もしなんかあっても君に責任とってもらえばいいかなーなんて!」
「・・・・・やっぱり死んでおけ!」
「ぎゃあああーーーーーーーー?!」

「ハァハァ・・ここまで逃げればいいかな・・?」
全くほのかの言う通り谷本くんてからかいがいがあるなぁ!
っていうか、ほのかの毎日の惚気っぷり聞いてたら誰だって信用するよ。
ほんとに良い奴だな、谷本くんて。でも・・・兄としては複雑だよな・・
将来彼みたいな義弟・・・うーん・・・やっぱそれって美味しいな!
ガンバレ、ほのか。おまえが僕の妹である限り、彼は僕には手出しできまい。
はっはっはっなんか頼もしいよな、彼が味方だって思うとさ。うんうん・・
だけどやっぱちょっとおっかないよな・・・怒らせすぎたらヤバイ。
可愛い妹を持つと色々と苦労するよ、まったく。

「くっそ、あいつ逃げ足だけは早いな!」
「ほのかにオレのこと口止め・・・いや、無理だな・・」
「いまいましいやつらだぜ、白浜兄弟!でもって白浜一家!!」
「もう知らんからな、勝手にしろってんだよ・・・」


さて数日後、僕はまた彼から随分暗い報告と苦情を受け取った。
泊まりに行ったほのかとその晩色んなゲームの対戦で徹夜したらしい。
ゲームなら全般得意なほのかだからね・・そういや沢山カバンに詰めてたもんな。
「もうあいつ、なんとかしてくれよ・・」
こんな気弱な彼を見るとは意外だったよ、ほのかってもしかして最強・・?!
ちょっとだけ彼が気の毒に思えてしまったよ、ほのか。
「パジャマ姿で膝に乗っかって来るし、風呂上りはバスタオル一枚で出てきやがるし!」
「それは・・・ごめん、だらしない妹で。」
「おまけにベッドまでついて来るから結局勝負だ!」
「君たちなんでも勝負で決めるんだ・・大変だね・・」
「それで朝まで対戦してたの?」
「あのなぁ!一緒のベッドなんかで寝られるかよ!?」
「あ、そう。そうね・・」
「あいつはまったく・・・おまえ、兄ならなんとかしろよ?」
「うん、まー悪いかなーとも思うけどさ・・」
「可愛い顔してプロレスしようとか言ってくるし、どうにかしてくれ・・!」
「・・・・・えーと・・・」
「何しても許されると思ってやがんだ、あいつは〜〜!!」
谷本くんの悲鳴に近い苦情を聞きながら僕は思った。
将来彼の義兄になったら、こんな感じで愚痴を聞かされるのかな?
さっきから聞いてると苦情だか惚気だかよくわからないんだけど・・
「おめー、聞いてるかっ!?」
「き、聞いてるよ!すまないね、妹が。」
「ホントに困った奴だぜ。」
で、なんでときどき照れたような顔してんの?
って聞いたら怒るだろうなと判断して黙っておいた。
なんかさー、君たちってホントに仲良いね。
羨ましいって思えてきたよ。僕と美羽さんなんか・・・ううう
もう一緒に暮らして随分経つけど・・・!!あ、梁山泊でね。
でも組み手とかしてるしな、結構触れ合ってるかも?!・・痛いけど。
そうだ、いつか僕も美羽さんとの惚気を彼に聞かせるんだ。
うんうん、そうなったらいいのになぁ〜!
でも僕の場合、難関が多すぎる・・・
困ってるのかもしれないけど、谷本くんなんて幸せそうじゃないか。
「谷本くん」
「なんだよ?」
「いつもありがとう。ほのかも幸せ者だよ。」
「なっ、なんだよ、突然・・・!」
「うん、いつもよく面倒みてくれててさ。兄として感謝するよ。」
「そ、そんな・・改まって言われると・・・その・・なんだ・・」
「また泊まりに行くときは翌日のこと考えろよって言っておくよ。」
「!!い、いやもう・・ってまた泊まりに来させる気か?!」
「じゃあ、両親にも伝えとくから。ありがとう!」

谷本くんはかなり動揺してるけど、僕の言ってることは本心だよ。
うん、僕も未来に向けて頑張るぞ。・・かなり厳しいけどね・・






兼一視点で第二弾。楽しかったです。^^
お泊りネタを兼一視点で書いてみたらギャグに。ほんのり兼美羽ですね。(お初)
お泊りグッズの「なっつん2号」というぬいぐるみは「蛇苺」さんのネタです。
UFOキャッチャーで夏くんが取ってあげたもの。使用許可ありがとうございます!
ステキイラストサイト「蛇苺」様へはリンクでも行けます。お急ぎの方は→ コチラからどうぞv