あなたの笑顔に逢いたくて



私、あなたの笑顔を知らない
ほんの少し見えたときは嬉しかったけど
あれは私がおかしな顔したからなんだよね
あなたのほんとの笑顔が見たいの
どうして隠すの?それなら私だけに見せて


「ねえ、なっつんて好きな人いる?」
「いねぇよ。」
「好きなことって何?」
「なんだよ、それ?」
「趣味とかさ?」
「どうでもいいだろ、そんなこと。」
「なっつんてさあ、いつ笑うの?」
「笑う?」
「もしかしたら長いこと笑ってないんじゃない?」
「そうだな・・」
「最後に笑ったのいつ?」
「覚えてねぇよ。」
「ふーん・・」
「なんなんだよ、いったい。」
「ほのかといるときだけ?それとも・・・」

そういえば学校ではついこの間まで
おかしくもないのによく笑っていた。
正確には学校でのもう一人の俺がだ。
最近は愛想笑いも減った。
煩わしくて一人で過ごすことが増えたからだ。
説明するのも面倒で「いつもだ。」と答えた。

「笑って、なっつん。」
「おかしくもねぇのに笑えるか。」
「ほのかと居るの楽しくない?」

「・・・楽しくなんかねぇ。」
「なんか間が空いたけど。」
「わかんねぇこと訊くからだろ。」
「ほのかはなっつんと居るの好きだじょ。」
「う」
「なっつんは優しいし面白いし。」
「誰が?!」
「なっつんは?」
「おまえはやかましくて面倒だ。」
「ふ〜ん?」
「なんだよ、その目は・・・」

口ではなんと言ってたってなっつんは優しい。
オセロ勝負に熱くなる単純なとこもカワイイ。
なんだかんだやかましいのはお互い様だよ。
心配症のパパみたいだなって思うもん。
お兄ちゃんとはちょっと違うんだよね。
それのひとつが笑顔なんだよ。
お兄ちゃんは笑ってくれるよ。
なっつんにそう言ったらなんだか急に不機嫌。

「帰れよ。」
「どうして?」
「俺はおまえの兄でもなんでもねぇ。」
「そうだけど・・」
そっぽ向いちゃって、なっつんて子供みたい。
「お兄ちゃんと比べてるわけじゃないよ!」
「ねえ、こっち向いて。」
「うるせぇ!」
「笑ってみてよ、なっつん。練習!」
「嫌だ。」
「ケチ。」
「なんだと?!」

目を反らしていたら腕を掴まれ思わず顔を見る。
真剣な眼差しで俺を見つめていたのに驚く。
「なっつんに笑って欲しいんだもん・・・」
今にも泣きそうなくらい大きな瞳が揺れる。
ついその頬に手を伸ばしてしまい引っ込みがつかない。
結局柔らかい両頬をつまんで引っ張った。
「!!ひたーい!(痛ーい)」
両頬を摩り、涙目で抗議の声を上げる。
「何すんの!?痛いじゃないかー!!」
「ふん」

その後も攻防は繰り返されたが笑顔は見られなかった。
ほのかはあきらめるもんかと心に誓っていた。
なんとかプライドを保ったらしい夏は嘆息していた。
その後に顔に浮かんでいるのはいつものものだ。
どうしてだかほのかを前にすると浮かんでしまう表情。
ほのかはいつもその場面を見逃しているのだ。
夏自身もそんな表情を浮かべているのを知らない。
彼が長く忘れていた自然に浮かぶ優しい気持ち。
お互いにそれに気付くのはまだ少し先。


”どうして笑って欲しいんだろう?”

”何故心が軽くなる?”

”あなたに笑って欲しい”

”いつも見つめていたい”

ほんの少し未来にきっと気づくね



”あなたのことが・・だから”

”おまえのことが・・・から”









相変わらずくさいもの書いております。(^^;
ラストの・・・の部分はわざと入れませんでした。
入れないほうがより”くさい”かな〜vと思いまして!(笑)
ほのかの方が「好き」夏の方が「愛しい」と入るんですけどね。
おっとばらしてしまったよ!でも無い方が良いと思いません?