まどろみ 



りんの湿った身体が肌に心地良い
唇は心なしか尖って触れた部分が熱い
私の唇を求めるかの様子が甘い
僅かばかりの重みと吐息が五官を擽る
弛緩した身体と満ち足りた想い
このひと時の価値は喩えようもなく
熱く溶け合う以上に離れがたきとき
汗で艶を増した髪を梳いて心抑える
想いでりんを壊してしまわぬようにと


色付いた皮膚の下の血脈を確かめ
私と混ざり合った匂いを楽しむ
汗で冷えぬように包みこんで
項に張り付いた黒髪のひと房を寄せ
なだらかな肩からりんの形を順に廻ってゆく
爪で傷けぬよう慎重に触れる
時折身を震わせる様を味わいながら
眠りを妨げぬよう只管に緩やかに
尽きぬ欲を呼び覚まさぬよう密かに


再び目を覚ますまでのこの時を
一人心ゆくまで楽しむ
溺れるほど注ぐ想いと引き換えに
どこまでも安らかなまどろみを願う
眠りがおまえの疲れを癒せるように


りんは夢のなかへと落ちている
時折動く眼球はその証
微かに囁かれる言葉は私の名
夢さえも私に差し出してくれるのか
おまえのほかに愛しきものを知らぬ
伏せられた睫の一本まで私のものだ



”殺生丸さま、そこに居るの?”
”りんまたいつの間にか眠ってしまったんだね”
”一緒に居るのにもったいないって思うけど”
”夢の中でも殺生丸さまに呼ばれるんだもの”
”どちらも嬉しくて幸せでいっぱいなんだよ”
”きっと今もりんを抱いてくれてるんでしょう?”
”こんなに安らかでいられるんだものね”
”起きたらまた熱くなってしまうから、今は”
”心地よい温かさを感じていたいの”
”夢の中の殺生丸さまは起きてるときより優しくて”
”髪の先から爪の先まで微かな指先が伝わってくる”
”あまりに気持ちよくて心がふわふわ・・”
”でもそのうち物足りなくなって目が覚めるの”
”そしたら殺生丸さまの輝く瞳がお出迎えしてくれる”
”瞳に吸い込まれそうだけど吸い込まれるのはりんの唇”
”また二人して蕩けてしまうね・・・”



りんはもうじき目覚めるだろう
黒い瞳は私を捉えおまえを求めずに居られなくする
おまえもまた私を求めて舌も腕も何もかも絡め
二人また想い満たされ蕩けあう・・・