愛しき命



暗い 暗くて寒い
どんどん体が冷えてゆく
殺生丸さまが見えない
きっと探してる 心配してる
帰りたい 帰らなきゃ

ここはどこ
いつか来たことがある
ここにはまだ来てはいけない
どうすれば帰れるだろう
殺生丸さまが 待ってるのに
どうか 帰して


ああ あれは・・・
殺生丸さまが呼んでる
ごめんなさい 帰りたいのに
どうすればいいのかわからないの
殺生丸さまが 悲しんでる
りんはここだよ
殺生丸さまが 怒ってる
殺生丸さまはなんにも悪くないよ
なかないで
きっと きっとまたあえるから

”そうとも りん”
・・・だぁれ?
”りん、殺生丸を頼む”
はい りんはそばに居ることしかできないけれど
”それでよいのだ りん”
殺生丸さまと居てもいいんですか?
”そうだとも。さぁ、お帰り”
ありがとう 嬉しいです。とっても
”いいこだ・・・そら、あれが呼んでいる”
はい


突然真っ白になると息が詰まった。
苦しくて咳をすると頬に温かさ。
大きな手。殺生丸さまだ。
「殺生丸さま」
ああ、帰れたんだ、殺生丸さまだ。
「もう、大丈夫だ。」
「はい」
安心して長い息をついた。
殺生丸さまがりんを見てくれてる。
すごく心配したんだね、ごめんね。
りんが起き上がるのを支えてくれた。
殺生丸さまの大きな手をいつの間にか握ってた。
でもずっとりんに触れてくれてるのが嬉しくて
りんも手を離さないでいたの。
嬉しい。あったかい。
りんは殺生丸さまのそばがいい。
でなければ死んでるのと同じ。
りんをじっと見ている殺生丸さま。
安心でいっぱいになる。

ありがとう
殺生丸さまにあわせてくれて。
ありがとう
殺生丸さまと邪見さま。
ありがとう
りんを助けてくれた殺生丸さまのおっかあとおっとうも。
ありがとう
生きているのが嬉しい。
ありがとう
殺生丸さまたちとまた旅ができるんだね。
あんまり幸せでずっと心の中があたたかい。
殺生丸さまがそっと立ち上がるのを手伝ってくれた。
こんなに近くでりんを見てる殺生丸さまって初めて。
でも知ってたよ、いつも見てくれてたこと。
邪見さまも殺生丸さまもりんのこと大切に想ってくれてること。
りんね、きっとずっとずっと幸せだよ。
そばに居られれば、それだけで。
ほかには何もいらない。



りんが目を開けて私を見る。
脈打つ鼓動を聞く。
りんが私の名を呼ぶ。
小さな手で私を慰める。
私の全てが安堵する。
離しはしない もう二度と。
この命を護るために 私はある。
忘れはしない この命
ほかには代えられぬということを。