Tumi to Batu 


命が消し去られる瞬間、体は重力を失くす。
真っ暗な闇が降り、次に真っ白にスパーク。
意識は完全に途絶え、ネットも切断される。
その後、再起動までの間記憶も失っている。

”シリアルナンバー○○○○は消去しました”
 
無機質な音声案内はデータをデジタル化したものだ。
そしてデータ処理と整合後ネットワークは再起動する。

さざめくミサカたちの内の細々した日常の一コマが

一固体の『死』であった。



ミサカたちは殺される前提の集合体であったから 
そんな風に『死』は身近で当たり前の出来事だった。
そのことがあのヒトを苦しめていることも知らず。
実験を躊躇する彼の言葉に疑問など抱くには至らない。

彼が一個体を殺すたびに、彼の心は死んでいったのに。

殺して欲しがっていたわけではないけれど、否
実験の速やかな進行を望んでいたのも事実だった。 
痛みも苦しみも、そこに在るだけの事象に過ぎず
どれほどの深い傷を彼に与えているかなど思いも寄らない。


”泣かないで、あなた。ごめんなさい、ミサカは・・”


彼が最終信号を救った夜のこと。
ネットワークは一時混乱に陥った。

実験凍結、最終信号による暴走計画、その停止に至る道は
どのミサカにも多大な影響を与えた。
絶え間なく更新され流れ込む情報、その質量共に途方もないもので。

”最終信号、落ち着いてください。泣いているのはあなたです。”

”たすけて、あのヒトを。苦しみでがんじがらめにしてしまったの”

”その責任は司令塔が負うものではなく、彼自身の問題です。”

”でもあのヒトは泣いてる。このミサカにはそれがわかるんだよ”

”彼は一命を取り留めました。確認は再生後直接行うことが可能です。”

”そう・・早く会いたい。伝えないと・・共に生きていることを”



長い永い夜が明けて、生まれ変わったあなたとミサカ。
罪を一人で背負わないで。ミサカたちはあなたと生きている。
もうひとりにはしない。一生傍にいるから、どうかどうか・・





「おはようー!ってミサカはミサカはあなたに朝の定番のご挨拶!」
「・・・・・ォか・・・」
「ん?相変わらず寝起きが悪いけど寝顔はめちゃ可愛いわね〜vって」
「ミサカはミサカは頬を弛なせばがらあなたの言葉を聞き返してみる」

”司令塔、もう切断いたしますので後はごゆっくり。と代表者のミサカは伝言します”

「ありゃ!また向こうから切られちゃった。まぁ繋ごうと思えばミサカはできるけど」
「ここは一つ空気を読んでくれた妹達にぺこりと頭を下げてあなたの懐で和んでみたり」
「っていうかまだ寝てる・・可愛いなぁ、赤ちゃんみたく可愛い・・あ。そうだった。」
「こうやってミサカが惚気るから皆に嫌がられるんだった!って思い出したりなんかして」

「・・ぅるせェ・・・即黙れ・・・でねェと・・」

「うふふ・・黙らせて欲しくてミサカはミサカはわざとあなたの耳元に近付いてみたり」
「って、期待を込めて待っても少しもアクションが来ないってことはやっぱり寝てるのね」
「あなたの腕の中っていつもあったかいね、ってミサカは居心地の良さに感極まってたり」
「でもこうしてるとまたヨミカワに怒られてお布団剥がされるかもよって懸念が・・・」


「ちょっとお〜!なんでこのミサカがデバガメ役なの、いつまでやってんのさ?!」
「あ、番外固体。おはよお!だってこのヒト起きないんだもの。どうしよう?」
「ミサカが鉄釘飛ばしてもいいけど、最終信号がぶっちゅとすれば起きるよ!」
「この頃それでも起きない確立が高いんだけど・・とりあえずやってみるね。」

「・・・・やめろ。起きた。てめェらやかましいンだよ、毎朝毎朝ァ・・」

「きゃああ!第一位が裸で最終信号を抱き締めてる〜!アンチスキルさん、ここですよー!」
「どこ見てやが・・おィ、おまえ退け。また俺ン布団に潜り込んだンかよ」
「せっかくだからちゅーしたいよ、ん〜v」
「アホか、こらそこ!カメラぶっ壊すから寄越せ」
「ふふん、ばっかじゃない。もう何度目だと思ってんの。」
「そうだよ、もうネット内ランキングにも入ってるから遅いと思うってミサカは」
「イイ加減、俺をおもちゃにして遊ぶなって言ってるだろォが、てめェら!!」


彼、一方通行の日常はあれから随分変わったの。とても嬉しい。
楽しいことが増えていって、ミサカも楽しい。運命共同体って素適。
でもね、それはあの事件からじゃなくってもっと以前からだったの。
一方通行という存在がミサカたちを生んだんだもの。生まれる前から決まってた。
彼の痛みとミサカたちの痛み、彼の苦しみとミサカたちの苦しみは同じもの。
そして彼が初めて経験する喜びも、これからする未知の体験も全部、分かち合う。

なんてステキなの。一緒が嬉しい。生きていることも。
もう誰も殺さなくていい。涙も流していい。ミサカも泣くよ。
あのね、罪を罰することができるのは罪を冒した者だよ。心は見えないから。
ミサカもあなたも、一生罪を忘れない。罰も受ける。だけどひとりじゃない。

「朝ごはん食べよう!一緒にいただきますしなくっちゃ!」
「わァってるからとっとと出てけ、着替え出すとわめくだろォが。」
「それはあなたがデリカシーを解さずにすっぽんぽんになったりするからでしょって」
「きゃーっ!言ってるそばからっ・・ミサカは布団に潜って更に目を閉じてみるー!」
「馬鹿馬鹿しい・・風呂入ったりしてンのによォ・・」
「ちらっと好奇心という名の下にあなたの様子を大胆にも覗き見てみたりして・・・」
「見たけりゃ見ればァ?生憎もう終わったけどよォ。ホラ、手ェ洗いに行くぞ。」
「あなたは顔も洗わないと。ってちょびっと残念さを滲ませてあなたを追いかけてみたり」
「おまえまた後ろから悪戯すンなよ?」
「いやだなぁ、そんなこと・・ってミサカはミサカは内心冷や汗もので目を反らしたり」
「昨日なンぞ髪留め付けたままコンビニ行ったっつの。まァそンくらいならイイけどよ」
「あなたの許容範囲の位置づけがイマイチわからない。リボンは怒ったよね?!」
「当たり前だろォが!?今度やりやがったら承知しねェぞ、クソガキ!」
「すごく似合ってたのに・・・店員さんに見惚れられたじゃない?ってミサカはミサカは」
「あのアホ店員!女と勘違いしやがって・・・やっぱ半殺しにするべきだったよなァ・・」
「どうどう、落ち着いて。ポニーテールだと項が見えて色気が3割り増しだからしょうが・・」
「痛い痛い痛い・・・ごめんなさい。もう言わないから髪を引っ張らないでええっ!!?」
「ったく・・アホ毛引っこ抜くぞ、終いに。」
「抜いちゃだめってミサカは理不尽なあなたに非難の目を向けてみるう」
「・・・フン!」

歳相応な顔つきや言動も随分板に着いてきたなってミサカは思う。
あなたに言うと苦虫を噛み潰したような表情をするでしょうけれど。
良かったなぁってミサカはミサカは胸が熱くなる。あなたがこんなにステキなヒトで。
運命だってわかってたってうまくいかない可能性だってあるわけで。その点ミサカは
幸運だと感じざるを得ない。とにかくミサカはあなたが大好きだってことなんだけどね。
っと、これもネットワークでは流せない。”また惚気ですか”って言われるから。
皆がわかってくれないのは多少悲しい気もするけれど、皆が皆、彼を好きだと困っちゃう。
なのでここは司令塔という立場を利用して皆に言っておかなければならないの。

”このヒトのことはこのミサカが一生面倒見るから。そこだけは譲れないからね!”

”心配には及びません。と、代表して述べます。寧ろ呆れます。どんだけ好きですか、と。”

”どんだけって・・・底なしに好き。どうだ、スゴイでしょ!?”

”一方通行も言葉では示さないものの、底なしに司令塔を想ってますしね”

”えっ、それどこからの情報!?ミサカに伝わってないってどういうことなの!?”

”それは・・・(アホらしいから)伝える必要がないからです、と端的に答えます。”

”どーして?どーして必要ないのおおっ!?ってミサカはミサカは憤ってみるーっ!”


”切断しようがどうしようが毎日あなた方から伝わってるからです、幸せ過ぎオーラが。”

”一体これって何の罰ですか!?と、文句の一つも言いたいと述べておきます。”

”便乗してミサカも言って宜しいでしょうか、爆発しろ!って感じですこのヤロウ共!”

”あわわわ・・・ご免なさいっ逃げます!”

”あっ司令塔がばっくれやがりました!と報告します”

”放っておいてよいのでは、と投げやりに返答してみます”


やれやれ、繋がっていると良いときもあるけど、困ることもあるよねってミサカは独り事。
これはきっと幸せ者の受ける罰に違いない!とミサカはミサカは満面の笑みで納得してみるー!







・・・前半の暗さはどこへ・・?
私にはシリアスが書けないのか・・と軽く落ち込みますたv