「聞かせて」 


知ったかぶり ってヤツか
知識はデータからチョイスするもンだ
実際に体験しなくても想像はできる
しかし想像には実のところ限界がある
知りようも無いことが この世には

  あふれかえっているンだから 

俺は選んでないからと いきがってた
要らないもンと決め付けて踏みつけて
見向きもしなかった 例えば寂しさなンぞ
知ったところでどォすンだ?!ってトコだ


恥ずかしくて聞くに堪えない言葉たち
人の温もりとかそンな・・どォでもいいような 
おいおい そんなもン俺にどォしろってってな
痒くて皮膚を掻き毟りそうな台詞とか
くだらなくてしょうがねェそんな言葉


言葉を 俺には想像すらできない言葉を
聞かせてほしい いたたまれなくなっても
ここにいていいと許された証を 



寒くてやりきれなかった旅の終わり
奪い取ってきた未来が俺の前で声を発する
聞きたくてたまらなかった声が いま


「でね、アナタの歌はとても優しかったんだとミサカはミサカは述懐してみる。」
「・・また記憶修正したンかよ・・・ハァ・・」
「そうじゃないって即効否定!あのときミサカの体に直接響いたのってミサカは真剣に訴える!」
「体で覚えてるってのかよ・・?」
「あったかかったの!もしかして抱いてくれていたから!?ってミサカはミサ・・」
「・・・黙れ・・」
「もが・・!そんな照れることもないと思うのに、可愛いんだからっ!てミサ・ぅわぷ!」
「まァなンだその・・・寒くなかったンならよかったな。」
「ずっと傍にいてくれたんでしょ!ミサカはミサカはどうしたらこの感動をアナタにって・・」
「アーもォ・・マジでうるせェし・・・」

声がもたらす心地良さに体が揺れる 俺の中に染み渡る
ずっと一緒にいたかったなンて素直に言った台詞さえも
恥ずかしさを通り越して心地良いンだから最強に莫迦だ
まとわりつく体温 笑顔まで なンだこの大盤振る舞い

幸せそうに見える声の主を軽く押さえつけた手の隙間から覗く
あのときは熱だったが、いまは興奮気味のため射した頬の赤み
離れたくないとアレ以来俺がどこで何をしていてもついてくる

おかしくなりそォだ 甘くてもいいンじゃねェのかもうどォでも
投げ槍に平和を噛み締めていると指の隙間から爆弾が飛び出した

「でもってアナタがどんなにあったかい腕をしてたかってことはミサカだけで大切に保存しようと!」
「ちょ・待て、なにそれ?ンな記憶ばら撒かれてもアレなンだが、それって・・」
「あれ、照れないの?意外だったりするかもとミサカは口をひよこにして表現してみたり。」
「ミサカだけが覚えてたいの!ってちょっと大胆にもあなたに告白したり。」
「・・・・あーのーなァアア・・・くそガキにちょいと言っておくが・・・」
「アナタこそこの手をどけてくれないかな?ってさっきからどうも理不尽な扱いに不平を唱えてみる。」
「聞けよ!」
「はっはい!・・なんというかなんだかアナタの真剣な顔は何故かミサカの体調に変化をもたらし・・」


甘ったるくて聞いた端から蕩けそうな声の主の耳元に
小さく小さく呟く コイツのほかに聞かせたくないから


「記憶を共有するのはいい、だが覚えとけよ?」
「顔・近い・・ってどおしてかミサカの声まで小さくなるのだけど・・」

「直接俺と触れた記憶だけはオマエただ一人が持ってろ。」
「つまりそれは・・アナタとミサカだけのものってことで・・・あってる?」

度を越して赤くなっている顔に思わず苦笑する なンて顔だそりャ
こンな顔も オマエの持つ体温も 直接脳に響く声の全て
こうして向き合ってる者の特権だ 思い上がった莫迦でもいい
この思い上がりをくれたのも オマエじゃないか だから
護る そのために何度でも立ち上がる この声を記憶だけにしないために

赤く茹だって黙ってしまった無言の額を指で小突くと
ぱたりと空気の抜けた人形のように後ろのソファに座り込んだ

「どォした?大人しくなっちまって」
「・・そのなんでもないって顔が憎たらしいってミサカはミサカは上目遣いで睨んでみる。」
「オマエの反応がイマイチわかンねェことがたまにあるな。」
「最近わかってきたけれどアナタはわりと天然さんだよね、ある一点で。」
「どの観点から言ってンですかァ?」
「ううん!意地悪して教えてあげないってミサカは宣言してそっぽ向いてみたりして。」
「なンなンだ。わっかンねェなァ・・」
「へへ・・これも誰にも教えられないなって・・」
「ひとりごとかァ?おい、なンだよその顔はよォ・・」
「なんか・・幸せってきっとこんな気持ちだって噛み締めてるんだけどな。」
「あァ・・・そォかもな。」

ニヤ二ヤと笑っていたかと思うとぱっと顔を上げた瞳は丸まっていた
おそらくこれは間違っていないだろうと俺は出した答えを反芻してみた
二人が今お互いにそういう感覚で満たされているのだというこの現実

「あくせられーた!」
「ンだよ?打ち止め」
「なんでもないっ!」
「・・・・そォかよ」


聞きたかった声が沈黙する そして俺を見る
こんな聞えない状況なのに まるで聞えているようだ
溢れかえるような言葉 愛だかなんだか知らないが
向き合って 黙っていても 感じる喜びと温もり


あァ・・・そうだ・・・ずっと聞いていたいな・・・















束の間の平和に浸る二人 早く本当の平穏が訪れますように
初書き・・!><;