How to love 


愛し方がわからない 愛する意味を知らなかったから
愛され方がわからない 愛される立場になかったから
触れ方を知らない 壊し方なら得意なのに
癒し方も慰め方も あれもこれも 知らなすぎて困る


一万回以上殺されてもわからなかったなんて
ごめんね あやまってすむことではないけれど
心を殺し続けることは感じる痛みと違って辛かったでしょう
ありがとう ミサカはアナタに伝えるために 生まれたの



「ねぇっ見てっ!これこれっ!てミサカは興奮を抑えずに見せびらかしてみる。」
「それ・・あの毛布か?」
「そうってミサカはミサカはアナタと出逢ったときみたいにこれを被ってみたり。」
「ンなボロ布・・なンでここにあるンだよ?」
「へへへ〜!修復を施してもらったんだよってミサカはミサカは得意気に鼻を鳴らしたり。」

あれからもう何年経つのだろう。幾度も死線を越えて二人は今ここにいる。
思い出の空色をした毛布でもって打ち止めは嬉しそうに包まり満足そうだ。
どんな魔術だか科学だかを使ったかは聞かず、懐かしむ打ち止めに一方通行は目を細めた。

「・・あンま変わらねェな、オマエ・・」
「む・それは言い過ぎってミサカはミサカはお年頃なのだからアナタに気遣いを求めるよ。」
「その毛布取っ払ってよく顔見せてみろ。」
「おおっ!なんとアナタにそんな茶目っけを期待してなかった分嬉しいと言うかミサカは・・って」

出逢ったときのように毛布をひっぺがす一方通行を予想して身構えた打ち止め、しかし
そんな予想に反して一方通行は毛布を被っている打ち止めの肩にもたれ掛るように腕を廻した。
当然顔が間近に迫り、打ち止めはどぎまぎして思わず息を止めてしまう。至近距離で目が合った。

「・・どうしたの?少し・・アナタが悲しそうに見えるのが気になるんだけど・・」
「・・あの日”一方通行”は一度死ンだンだなって・・俺も昔を懐かしンでンだ。」
「!後悔なんてしてないでしょっ!?ってミサカはミサカは・・二人の出逢いを否定してほしくない。」
「後悔なンかするかよ。ちげェよ・・オマエが俺を・・見つけてすくいあげた日だ。肯定してンだぜ。」
「アナタはすぐ自分を悪者にしようとするんだから。おんなじだってミサカはミサカは言ってるのに!」
「殺された方が何言ってンだって俺は思った。」
「何度でも言うけどミサカはアナタに感謝してる。それにアナタに辛い思いをさせたの。同じでしょ?」
「それはオマエだけの理屈だ。誰も支持しねェだろうな。」
「そんなのどうでもいい。アナタにミサカを殺させ続けたことは罪だよ。だから返させてよ。だって・・」
「それはオマエが返すもンじゃない。そうさせた奴らに罪があったとしても俺は無罪放免じゃねェンだ。」

”なんとかして彼の苦しみを軽くしてあげたいのにいつもうまくいかない”と打ち止めは唇を噛む。
涙ぐみそうになっている打ち止めに、一方通行は打ち止め以外は誰も知らない優しい表情で微笑んだ。

「こォら・・噛むなっつってンだろ。」
「らって・・アナタが・・っ!」

泣くのを堪えているため、打ち止めの声が震えた。噛み締めて赤くなった唇も同じだ。
その震えを止めたくて一方通行は自分の唇をそっと添えた。慈しむような優しい口付け。
優しすぎたのか打ち止めは驚くよりも自然に眼の前の人に手を伸ばした。応える腕が迎える。
ぱさりと毛布が乾いた音を立てて落ちる音がしたが、二人は気にも留めず柔らかく抱き合う。
少し隙間を空けたのは一方通行だった。空いた距離を瞳と瞳が交差していた。
薄く開いている打ち止めの唇はさっきのような痛々しい赤ではなくなっていた。
そのことを確かめたのか一方通行は再び微笑んだ。痛みを抑えるかのように打ち止めは胸に手を当てた。
 
「今のって・・キス?ってミサカはミサカは確認を取ってみたい・・一瞬だったから・・」
「・・さァ?そりゃ違うかな。」
「それじゃあアナタはミサカを宥めるためにそうしたってことなの?って眉間に皺寄せて尋ねてみたり。」
「俺はただ・・なンで不機嫌になンだ?!・・キスして欲しかったって言ってンのかァ?!」
「この天然さんはぁ〜!女の子を慰める手段とかそういうのは特定の男性にしか認められないんだよってミサカは」
「ンなこと言われてもな・・わかンねェよ、女とそういうことしたことねェし。」
「えっ!?・・それって事実?!とっても気になる情報にミサカのアンテナがビビビッときたけど。」
「愛欲の道具としか捉えたことねェから・・おっとお子様には不適当な説明だったな・・」
「バカにしないで!ミサカだってそのくらいわか・・わかって・・アナタもしかして・・そ、そういう方面での・・」

打ち止めはあの実験以前や、それ以外の彼のプライベートの過去は知らない。なので
彼のそういった経験値については何も知らずにいた。そのことについてあまり考えたこともない。
それが突然気になってしまったのは、打ち止めが一方通行のことを男性としても愛しているからだ。
焦りと不安で顔色を悪くしている打ち止めを見ていた一方通行はぶっと眼の前で吹き出した。

「なっなん・・!?笑い出すってどういうことなのっ!?ってミサカはミサカは真剣なのに!」
「す、すまね・・ちょっと待て。ぶっくく・・」

腹を押さえて体をくの字に曲げて笑う一方通行に打ち止めは怒り心頭になり、顔は真っ赤だ。
なんて人なの!と彼の背中をぽかぽかと叩き出す。しかし効果はなく、却って煽っているようだ。
ひとしきり彼らは笑いと喚くような打ち止めの文句で賑やかだった。それらは収束まで数分を要した。

「だからわりィって!謝ってンだから許せよ。」
「もうここまで怒らせたら多少のことでは許せないよってミサカはミサカは断言してみたり。」
「殺されるより腹立つとしたらおかしいぞ、オマエってやっぱ。」
「フンだ。変わり者って点でもアナタとお揃いだよってミサカは悔し紛れにあかんべしつつ言ってやるよ。」
「打ち止めサンに正直に告白すっから、な?」
「告白!?って、過去のあれこれなら聞きたいような聞きたくないようなって・・」
「そうじゃねェ。俺はなァ・・オマエがこれから教えてくれよ、なンも知らねェから。」
「え?教えるの?ミサカがアナタに?何を・・」
「どォすればいいかをだ。俺も考えっけどよ、まるでそっちは経験ゼロだかンよ。」
「そっちってどっち!?ってミサカはミサカはアナタの思わせぶりに途惑ってみたり。」
「教えてくださィ。恋愛なンざ初心者なンで。お手柔らかにな。」
「そっ・・・そんなのミサカだって・・知らないよっ!」

忙しく表情の変わる打ち止めはまたもや赤く染まっていた。その頬に一方通行の指が触れた。
「じゃア・・二人で試行錯誤してくか?」そう言って「手始めだ」と頬に口付けが贈られた。
打ち止めは嬉しさで蕩けそうな微笑を返す。そして「上手だね」と一方に赤い顔をして告げる。
一方通行はくしゃりとその小さな頭を撫でながら、自分の胸へと引き寄せた。


ひとつひとつ覚えていこうか 二人ならきっと なんとでもなる









誰ですか、これ・・!?デレ一方さん初書きしたデス☆