夢よりも淡く



横顔をよく飽きず眺めた
前方を見つめる眼差しは
瞳の清しさと共に輝いていた
美しいと気付かずに見つめた


痛みを力ずくで覆い隠し
傍に居られればきっと癒されると信じた
懸命に生きていれば得られるものとさえ
漠然とした期待に塗り固められて
知ることを知らず畏れた


いつでも触れられたのにしなかった
微笑みの心地よさに酔いながら
触れることは罪悪にさえ思えた
愚かだと笑いとばされても
失いたくないと気付かなかった
あの眼差しを
清らでしなやかな君を



何もかもに耐える強さがあっても

あらゆる苦難を乗り越えられても


君がいなければ



笑顔が欲しかったわけではなかった
強い君でなくてもよかった
一人きりは怖かった


くりかえし言い聞かせては
君の全てを護ろうとした
それ以外に知らなかった
すり抜けた君の身体は軽かった






「朱氏・・・」
名を呼びたかった
二度と呼べないとわかっていながら
「聞仲くん」
呼ばないでくれ
微笑まないで
もう声にならない
それでも君は



失いたくなかったものは
君の思い出ではないのに



あまりに淡くて掴めない
目の前で微笑む君を








一見暗いですが、実は甘いんですよ、これは。
・・いいわけめいてますが、初「聞仲×朱氏」です。
どうしてこう好きなんだろう?ってくらい好き。