明日は晴れる



「明日は晴れだな。」
「良かったですね。」
病が重くなると彼は傷の痛み具合で天気がわかると言って笑った。
あなたの痛みが少しでもましになるのならと私も晴れを待ち望んだ。


「母上、明日はきっと晴れだよ。」
「・・・どうしてわかるの?」
「うーん・・・なんとなく。」
「そう、でもきっと晴れるわ。」
「母上が言うならもう間違いなしだよ!」
きらきらと笑顔を振り撒いて周の王が笑う。
摂政である義弟の旦がほんの少し目を細めた。
彼もまた兄のその言葉を良く覚えているのだろう。
「さ、お勉強の続きですよ。」
「え〜!?もう休憩終わり?もうちょっと・・・」
母の無言の圧力に負けて、まだ幼い周王は机に向かった。
「ほんとにそっくり。」
「僕が父上に、でしょ!」
「あら、ごめんなさい。」
「ううん、いいんだ。だってそれ言われると嬉しいんだもん。」
「・・・」
「母上のこと大好きなのも一緒だよ!」
そう、あなたの笑顔はあの人にもらった宝物。
どんなに苦しくてもそれを忘れなかったあなた。
あなたの子も受け継いでいますよ、飛び切りの笑顔を。
私は不器用であまり笑えなかったけれど。
そんなところも好きだと言ってくれた。
何故かしら、軽薄にも浮ついても見える言葉も
あなたの笑顔に包まれると真実と思えた。


「笑って、邑姜」
「笑ってるわ。」
「泣いてもいいんだぜ。」
「笑えと言ったくせに。」
「俺が居なくなったら泣いていいんだ。」
「そんなこと聞きません。」
「泣いてくれよ、そうじゃねえと心配でおいていけねぇ。」
「だったらいかないで、ずっと・・・傍に居て。」
「俺もそうしたいんだけどよ・・・すまん・・・」
「・・・」
「明日は晴れだ、邑姜。」
「そうですか、良かった。」
「お天道さんが出たら俺も見てるから笑っててくれよ。」
「雨の日は?」
「泣いていい・・・」
「何故?」
「おまえ、そうでも言っとかないと泣かないだろ・・・」
「そんなの勝手に決めないでください。」
「政務や子供のことばっかりでなくて俺のことも考えてくれってこと」
「嫌です。」
「邑姜・・・」
「これ以上あなたのこと考えられないわ。」
「へへ・・・今日は素直だな・・・」
「誰も居ないもの。」
「ばっか、居るだろ、お腹ん中に!」
「あいつの弟か、妹がな。」
「だから、もう少し。お願い、顔を見てから・・・あなた!」




「母上ー、泣いてるよー!」
「・・あれはオムツね。」
「僕する!」
「あなたはお勉強でしょう。」
「お願い、オムツ替えるだけ!!」
「仕方ないわね。その後すぐ戻るのよ。」
「は〜い!」


あのとき泣き出した私をあなたは大きな手でなぐさめてくれた。
痩せたその手は変わらずに大きくてそれが辛かった。
「そうだな、顔くれぇ、見たいなぁ・・・俺も・・・」
あなたを困らせるつもりはなかったのに、ごめんなさい。
今ならいかなければならなかったあなたの辛さがわかるわ。
でもね、あなたが明日顔を見せてくれるから笑うわ。
明日は晴れるのですって、あの子が教えてくれた。
逢いたいわ、だからきっと晴れてね。
「ううん、大丈夫。明日は晴れるわ。」
雲の切れ間からあなたがこっそり覗いてる気がする。
私たちの笑顔を明日はあなたに・・・








初めての発邑がこれってどうなの?と自分に突っ込み。
ごめんなさい、発!今度は生きてるのを書くからね!