何故だか教えて



わからないことがたくさんあるの
ありすぎて誰にも言えない
答えを知りたいけど知るのが怖い
この胸の痛みは何
訳もなく涙が込み上げるのは
寂しさに押し潰されそうな
期待に縛り付けられるような
いつも同じ面影が心を占めるのは何故



「こんなところで何をしてるんだ。」
突然ドアが開いて、やいとは飛び上がるほど驚いた。
「びっ・・くりしたぁ・・!炎山!?なんでここに?」
「おまえのナビは相当狼狽してたぞ。」
「グライドったら!内緒だって言っておいたのに!」
「この場所は隠れ家として適切とは思えないが。」
「なんでよ?ウチのビルの一つよ。今は立替前で立ち入り禁止だし。」
「不法侵入者にとっても格好の場所だ。」
「?私は不法とは言えないわよ。」
「・・とにかく陽が落ちる前にここから移動するんだ。」
「あんたに関係ないじゃないの。ほっといてよ!」
「怖い目に合いたくなかったら忠告をきいておけ。」
「何よ、偉そうに!嫌よ、私の勝手でしょ。」
大げさな溜息が聞えてむっとしていると炎山が近づいて来る。
がらんとしたビルの一室にやけに彼の靴音が響いた。
「何よ?!」いつもの虚勢を張るが彼には弱い。
幼い頃のふとした事件をきっかけにやいとの心を占める人。
親しいかというとそうでもなくライバル会社の息子とあっては
物心付いた頃には敵対心ばかりが育てられていた。
小さなきっかけで彼の一面を知るまでは嫌っていたのだ。
何故かその事件以来、彼はやいとを色んな局面で助けてくれる。
その度に感謝とは違う何かが彼女の心に入り込んでくるのだ。
もうあれから数年経っているが特に二人の関係に変化はなかった。
そもそも離れている期間も長く、何故いつまでも彼が心を占めるのか
いつもやいとはそのことを不思議に思い、心悩ませていた。
今回はいつものクールな彼らしくなく腹を立てているようにも見えた。
「・・見つけたのが俺でなく最悪の輩だった場合、どうなったと思う?」
初めて聞く様な冷たい声だったのでやいとは怯んだ。
「どうっ・・て?」
あまりにあっという間でやいとは事態の把握に時間がかかった。
腕を捕まれたと思ったらもう傍にあったデスクの上に投げ出されていた。
「いたっ!な、何・?!」
小柄なやいとは上背のかなりある彼に覆い被され身動きが取れない。
大きな事務デスクの上に張り付けられたような格好だ。
「何するのよっ!離してっ!!」
「こういう場合、黙らせる方法はいくらもあるが・・」
「炎山っ!やめてよ、お願い・・」
やいとの抗議を無視して彼はやいとの片脚を掴んで持ち上げた。
「っ・・!い・いや・やめて!炎山っ!!」
いつもの彼じゃない、そのことが余計にやいとを混乱させた。
彼の身体が自分に押し付けられるとたまらずに泣き出してしまった。
途端に身体が軽くなってデスクの上に座らされた。
「・・ってことで少しはわかったのか?」
両手で顔を覆って泣いていたやいとが目を向けると
いつもの炎山が少し離れたところで腕を組んで見ていた。
「う・ひっく・・え・えんざ・ん・・?」
「もう少し危機管理を教わっておいた方がいいぞ。」
「・・な・何よ・・!・・こわかっ・・う・」
「あれでも手加減したんだが。実際はこんなもんじゃないぞ。」
呆れたような彼の口調にやいとはぞっとして身震いした。
「わ・わかったわよ・・ここは諦めるわ・・」
「どうして家出なんてしたんだ?」
「家出だなんて。ちょっと一人になりたくて・・」
「ふぅ、人騒がせだな、相変わらず。」
「煩いわね!あんたこそなんでいつもいつも・・!」
「・・・もしかして私のこと随分探したの・・?」
「暢気なお嬢様を懲らしめられたからまぁ、勘弁してやる。」
「む・むかつくわね・・!あ、あんなの寿命が縮まったじゃないの。」
「帰るか?それとももう少し隠れていたいのか?」
「もう少し。だってまだ脚に力入らないんだもの・・」
「仕方ないな。おぶってやろうか?」
「おっ!?け、結構よ!何言ってるの、子供扱いしないで。」
「・まだまだ・・」
「?・・・ねぇ、炎山。どうしていつも・・」
ついうっかり訊いてしまいそうになって慌てて口を押さえる。
「なんだ?」
「な・なんでもないわよ!」「・・・あの、・・ありがとう・炎山。」
ふっと微笑んだ彼の笑顔があまりにも優しそうで胸がまたとくんと跳ねる。
「何かあったら俺に連絡しろ。単独行動はおまえの場合、危なすぎる。」
「へっ?!なんであんたに!?・・そんなに心配だとでも言うの?」
「わりと無茶をするからな。その度に探すのは手間がかかる。」
「あんたねー!それじゃあ過保護な・・その、えっとカレ・・みたいじゃ・・な・い」
「そうだな、おまえみたいな恋人持ったら苦労するな。」
さらっと言うけど私の心臓がさっきからどんだけ大変なことになってるか!
「あ、あんたみたいな恋人なんて私は願い下げよ!」
「そうか、それは残念だ。」
明らかにふざけてるわ、その笑顔。悔しい!どうしてこんなに・・
「何よ、・・・なんで私がこんな思いしなきゃならないのよ。」
「そのうち教えてやる。・・・まぁ、ゆっくりでいい。」
「え?なんて言ったの?」
「いや、別に。さ、そろそろ陽も落ちる、帰るぞ。」
「う・ん・・」


あなたのなかに私の知りたい答えがあるのかしら
この胸の痛みも、寂しさも、逢えたときの歓びも
いつか伝えられるのかしら 受け止めてくれるかしら
そのときは教えてね 私にくれる優しさの訳も









これ、2回も書き直しですよ・・・保存に失敗したせいで。(涙)
どちらも完成してからです。2回目はもう書くのやめようかと。(笑)
という馬鹿をこれまでに何度もやってるので、対策を講じます。
ああ、炎やいらぶv 今回は恋人未満でいってみました♪