思わず触れた 



出逢ってからどれぐらい経っただろうか
気付くと随分見た目には変わった
背も伸びたが元が小さいので差は変わらない
長く伸ばした髪はこの頃はよく解かれていて
かん高かった声は幾分落ち着きを持った
華奢なところは同じだが柔らかくなった
眼差しは優しく揺れるようにもなった
変らないのは素直じゃないところと
俺の前では特にそうだということだろう
口に出したことはないが、俺を見る眼も
俺は変っただろうか
自分ではあまりわからない
「相変わらず背が高くて、嫌味で口が悪い」らしいが
以前は離れていてもそう気にならなかった
やはり俺は変っただろう
見ているだけでは物足りなくなった
視界に納まっていればそれで満足だったのに
そんな俺に気付いているのか近づくと逃げる
眼が合えば反らしてまた遠のく
そうかと思えば寄ってくる
寂しそうに俺を見るくせに
眼で俺を探しているというのに
多少の苛立ちと物足りなさはおまえも感じてるんだろう
俺が黙るとおまえも黙る
そんな時間が増えた

「炎山、疲れてる?」
「いや?」
「じゃあ、退屈?」
「そんな風に見えるか?」
「ま、まあね・・少しね」
「退屈なら帰っていいぞ」
「何よ、そんなに私と居るのが嫌なの?!」
「おまえの方だろ、つまらなそうなのは」
「そんなことないわよ!」
くるりと背を向けたので帰るのかと思ったが
「・・・もう少し・・居てもいいでしょ?」
そんなことを言うから顔を見たくて
振り向かせたら長い髪が手に絡まった
「あ」
絡まった髪と俺の手に焦り解こうとする
面倒で絡まった手でこちらを向かせた
「!?」
そんなに驚くこともないだろう
見慣れた顔なのだから
そうだな、この近さは初めてかもしれない
息がかかりそうだ
「な・何?」
「別に・・」
「何よ、それ。」
「どんな顔してるのかと思ってな」
「私の顔なんて見慣れてるでしょ?!」
「俺の傍に居たいなんて素直なことを言うから」
「!!」
やいとは顔を赤く染めて、俺の手を解こうとした
絡まった髪のせいでうまくいかずによろめいた
だから、受け止めた
触れた身体は意外に冷たかった
温めたいと思った
だから
初めてそこへ触れた
もうずっと触れたかった
まるで知っていたような気がした
そうだな 知っていた
二人とも素直じゃなかったな
今日はお互いの記念日だ
少し素直になれた
甘くて心地良い時間を手に入れた
こんなのも悪くない








砂吐いていいですよ?・・・炎山やいと好きさんだって少しはいらっしゃるはず・・
ええ、そりゃもう少数派ですけどね。いいんですよ、もう。(涙眼)
管理人が哀れと思われた優しい方が「読みましたよv」と言ってくださる日を待ちます。
いつまでだって待ちますよ。きっとどこかにいらっしゃるさ!(自暴自棄っぽいな)