Love slow 〜ゆっくり恋して〜 



力の抜けた脚もようやく元に戻りそうになったとき
やいとはふと先ほどの怖い場面を思い出してしまった。
”やだっ!もう、また顔熱い・・”
ぶんぶんと顔を大げさに振って熱を冷まそうと試みた。
「何やってるんだ?」
「な、なんでもないわ・・あ!」
「? どうした。」
ふと湧いた疑問にせっかく冷ました顔がまた紅潮してしまう。
きくべきか、余計にまずい結果になりはしないかと逡巡する。
「何か訊きたそうだな?」
「え、わかるの?・・・・あの、ね?」
炎山はごく普通の表情で答えを待っている様子だ。
「あの・・さっき、その・・見、た・・?」
「何を?」
自分から問いかけておきながら激しい後悔に襲われた。
「あ・あの・・あんなに私の脚を持ち上げたりするから・・・」
何を訊かれたのかわからないのかどうか炎山は答えない。
「わからないなら、いいのよもう!今の質問忘れて!!」
「残念だが・・・よく覚えてないな。」
少し口の端が緩んでいるのが気になったが、やいとはほっとした。
「そ、そう!良かった。・・・て、やっぱり見えたの?!」
「まぁその、成り行きで。」
「いや〜〜〜っ!!!忘れなさいっ!いい?!すぐに忘れてっ!!」
可笑しそうな炎山の背中ををぽかぽかと叩いても動揺は治まらない。
恥ずかしくてそのまま顔を背中に押し付けてしまう。
「馬鹿。炎山のばかばかばか・・嫌いっ!」
呟きが背中越しに伝わって炎山は微笑まずにいられなかった。
「もうお嫁に行けない・・・;」
「俺以外に見せないように気をつけろ。」
「あんただったらいいってわけじゃないでしょっ!?」
とうとう笑い出した炎山にやいとはくってかかる。
「何よ?!ほんっとに失礼な奴ね!乙女の一大事なのにっ!!」
「笑ったら鮮明に思い出した。」
「えっ?!」
「もう少し色気のあるのが良かったな。」
「〜〜〜〜!!もう許せないー!すけべっ!乙女の敵っ!」
「心配するな、誰も知るわけないだろ。」
「・・その言葉信じるわよ?」
「ああ、誓う。」
「どうしてこう嫌なとこばかりあんたに見られるのかしら?」
「俺は嫌じゃないが・・」
「何か言った!?」
「こっちの話だ。」
膨れ面のやいとを見ているとどうしても可笑しくなる。
この少女がこれからどんな女性になっていくのか、
傍で見守っていたいなとそんなことを思いながら。
「ほんとに保護者の心境だ。」
「だからなんであんたが!」
「素直じゃないな。」
「な、なんかカンチガイしてない?!私、あんたのこと嫌ってるのよ?」
「勘違いなんてしてないさ。」
「ふーん・・?ホントにぃ?!」
「俺が大嫌いなんだろ?いつでも忘れられないほど。」
「!!〜〜〜!う・まぁ・・そう・・だけど・・・」
「覚えておけよ、俺は嫌いじゃない、おまえのこと。」
「!?・・・な・・」
「さ、早く家に連絡しないとそのうち警察沙汰になるぞ。」
「あ、うん・・」
背を向けて先を歩き出した炎山をやいとは慌てて追った。
”さっき、なんて? 私のこと・・・なんて?”
”またわからないことが増えちゃった・・・”
”また今夜も・・・眠れないんだわ・・・”
前を行く炎山の背中を見つめながらやいとはこっそり溜息を吐く。
そして前を行く炎山もまたこっそりとまた微笑んでいた。
”ゆっくりがいい できる限り”
”まだおまえの気持ちに名を付けなくていい それまでは・・”
”おまえの大嫌いな炎山で居てやるよ”








「何故だか教えて」の続きです。実はオマケにする予定でした。
ところが書いたらおまけにしちゃ長過ぎてしまいまして・・・
結局独立させてもらいました。みかぜさん、ネタありがとう〜!
やいとの下着は白です。いちごじゃあざといかな〜?と。(黙れ)