「始まりの合図」



髪を解くのは春になったからってわけじゃなくて
たまにそうすると驚くあなたが見れるから
別に私自身が変わるわけでもないっていうのに
・・そんなに違って見えるのかしら?
いつも嫌そうではないわよね?!
もしかしたら解いてると嬉しいの?
ときどき確かめたくなってしまうから
その日も少しどきどきしながらあなたを待ってた
だけどね、いきなり抱き上げるのは反則よ
びっくりするじゃない、もう!
抱き上げられるのは好きじゃないわ
緊張しちゃうし、顔は近いし・・
指も手もどこを支えにしたらいいか迷うんだもの
仕方なくあなたの肩に触れるしかなくって

「うんもう!!またぁ・・(怒)下ろして!」
「何故?」
「嫌なんだもの。下ろしてよ、炎山!」
「脹れ面。」
「むー!あんたのせいでしょおっ!!」
「髪を解くと軽く感じるな。」
「え!?まさか、そんなわけないでしょ?」
「いや、軽いな。」
「た、体重変ってなんかないわよっ!」
「もっと軽くしてやろうか」
「は?」
私は間抜けにも怪訝な顔を炎山に向けてしまって
後悔と恥ずかしさでいたたまれなくなってしまう
ほんの一瞬触れ合っただけなのに・・・
「ほら、軽くなった。」
「嘘。」
「俺にはわかるんだが。」
「あんた以外にわからないんじゃ・・」
「当然だ。」
「馬鹿じゃないの!?」
「もう一度?」
「いりません。」
「つれないな。」
呆れてそっぽ向いた頬にも触れられて
「・・ふいうちが得意ね?」
嫌味たっぷりに言ってやったんだけど
「隙だらけだからな。」
悔しくって睨んでも赤い頬はきっと誤魔化せてない
「もう下ろして!お返ししてあげるから。」
「それは嬉しいな。」
何を返してもらえると思ってるのかしら、馬鹿なんだから
それでもやっと床に足を着けることができてほっとする
「炎山、ちょっとかがんで。」
「抱き上げたままでよかったんじゃないのか?」
言ってなさいよ、と心を落ち着けてそっと手を伸ばす
炎山の両頬を挟むとにっこりと微笑んであげたの
「お・か・え・し!」
「っ!?」
抓られて顔を顰めるとこを見てやったわ、満足♪
「・・これはまた熱いお返しを。」
「べーっだ!何だと思ったのよ、やーね。」
「こんな愛のこもったお返しには・・」
「・・何よ、気持ち悪い・・」
「丁寧なお礼が必要だな。」
「い、いいわよ・遠慮・しとく・・わ。」
そのとき炎山はそれはそれは嬉しそうに微笑んだんだけど
仕返しなんてしなきゃよかったと心の底から思ったの
警報ベルが鳴ったような気さえしたわ
ただ少し驚かせて、髪を解いてみただけだったのに
どうしてこんなことになってしまったの?
一応抵抗を試みたけど、捕まってしまって後の祭り
涙の入り混じった声で「炎山なんて、キライ・・」
精一杯の意地悪を言ってみたって通じなくて
「わざとやってるんじゃないのか?」
「何をよ?」
「ふーん・・」
何を言ってるのかほんとにわからない
あなたのキスでもうフラフラだもの・・・








大丈夫ですかっ!?しっかり!洗面器のご用意は?!
くらくらしますよ、自分で書いておきながら。(恥)
ナビも使用人たちも逃げてるんでしょうね。二人の傍から。
一応数年後で、もう付き合ってますからね。(って今頃;)