「六月の花嫁」
side red. (炎山×やいと)


光博士に呼ばれたからには何かある。とは踏んでいた。
そして用意された物を見て、彼女が計画したんだろうと直に検討を付けた。
そして、おそらく自分達だけでは無くあの三人も連れて来られてるという事も。
結果は・・・言わずもがな。
絵に描いたような驚きを顔に浮かべて声を上げる同国の友人に、
氷そのものになってしまったのかと言いたくなる位に固まってしまっている北国の友人。
そして自分は、同性二人の様子を観察出来る程普通で何時もと変わらない。
相手方から一人、甲高い声で非難する声も耳に入ってきたが、
これも彼からしてみたら勿論予想の範囲内の出来事だった。

「―ごめんね。相手役が君だって言ったらここに来ないと思ったから・・言って無かったの」
久し振りに再会したこの計画の立案者は、炎山にこっそりと耳打ちしてきた。
「あぁ、言ってたら間違い無く来ない。そっちの判断は正しいよ」
申し訳無いと謝る彼女に気にしないで良いと首を振る。そう返された方はほっとした顔になった後、
微笑を見せて離れていった。

*********

「馬子にも衣装」
視線を交わさず、主語も無い。だが、誰宛てに発した言葉かと言えば横に居る自分に間違い無い訳で
(残念な事に、声の聞こえる範囲内には他に人が居ない)。
「・・・・・・・・・アンタに意見なんて求めて無いわよ」
やいとは、相当不機嫌だった。
ここに来たのは頼まれたからで、別に強制されていない。彼女が頼んできた事なんだから、
炎山も絡んでくると思わなかった自分が悪い。頭では分かっているが、それでも憤りが無くなるはずも無く。
彼女に直訴しても良かったのだが、墓穴を掘りそうだったので・・・止めておいた。
「――――――」
いきなり忍び笑いが聞こえたものだから聞きずてならなくなり、ムっとしながら問う。
「・・・何?おちょくってんの?」
「・・・いや」
「だったら何――」
「似合ってる」
怒りゲージが溜まった刺々しい声に重なったのはサラリとした声。挨拶するようにあっさりと、
余りにいけしゃあしゃあと言ったものだから、やいとは言葉を失った。

「・・・・・・・・・・・・」
(・・・怒らせたか?)
かなり長い時間少女が黙っているので、思わず炎山は視線をそっちへやる。
こちらを向いている訳では無いのでやいとがどんな表情をしているかは分からない。
「綾?」
「・・・・・が・・・・ぅ」
呼び掛けに返されるのは聞き取り辛い声量で吐かれた言葉。
「―――?」
こちらが何も言ってこないのを聞こえなかったと受け取ったらしいやいとは、
もう一度、先程よりも少々大きな声で言い直してくる。
「・・・あり・・が・・・とう」
妙にたどたどしい言い方だが、怒っていない事は理解した。
ふっと息を吐くと未だにこちらを向かない少女に言葉を投げた。
「どう致しまして」






このやいとちゃんがヤバイほど私にヒット!可愛くて悶えvv炎山がクールなのに驚くほど(笑)
でもまぁ、とっても彼らしい対応だと思いました。ほのぼのと可愛いカップルだよ、まったく!
こんな素適な三部作がフリーだなんてすごいです。みかぜさん、ありがとうございました!