「六月の花嫁」
side blue.(熱斗×メイル)


「ねぇ、似合ってる・・・かな?」
髪を触るように薄青の長いベールを指に捉えながら、メイルは遠慮気味でパートナー役に聞いてみた。
友達たちからは絶賛されたが、いざ一番誉めて欲しい相手に直接聞くとなると不安も混じる。
どきどきどき・・・。
目の前で聞かれた当人は、一呼吸間を置いた。
「・・・えっ・・と、うん、綺麗なドレスだよね」
(――――――はい?)
今、熱斗はなんと言った?
綺麗なドレス?私は―――?
少年の一言でピシっと彼女の表情が固まると同時に、周囲にある空気が凍り付く。
隣に居る炎山がわざとらしくこめかみに指を置いているが、
空気の読めていない熱斗は彼がどうしてそういう仕草をしているのか、まったく理解出来ない。
「ドレスだけが綺麗って言たいのね!ふんっ、良いわよ、もうっ」
怒りが頂点に達し鬼のような形相になってまくし立てたメイルは、
言葉の勢いそのままに背を向け大股で彼らから離れていった。

何時もと全然違う服装と髪型。
(女の子も雰囲気随分変わるけど、男の子でも変わるもんなんだ・・・。)
対面した直後、滅多に見れない幼馴染みの格好に・・メイルは不覚にも見惚れた。
もっとも、その見取れた少年の驚きの声に直に気を取り直したが。

(いくら外見が変わっても、中身は何時もの熱斗だもの)
淡い期待をした自分が馬鹿らしい!
周囲の物に八つ当たりでもしそうな感情を何とか抑えるメイルだった。

*********

「――あ、ちょっ、メイルちゃんっ」
手を伸ばして静止を呼びかける熱斗ではあるが、怒っている少女の耳には届く事など無い。
ヒラヒラと舞うベールはあっという間に小さくなっていった。
「――、なぁ、炎山ー」
力無く手を下ろし助けを求めるような微妙に情けない声を、隣の友にかける。
「あれはどう考えてもお前が悪いぞ」
ピシャリと半眼で言い切られた。
「いや、だってさ、」
その言葉に怒るでも無く、利き腕で心臓に手を置く。思案顔で眉を寄せ、自分の中にある言葉を手繰り寄せているように見える。
「なんか、こう・・ヘンにドキドキしちゃってさ、あんな風にしか言えなかったんだ」
考え出された割には余りに子供じみた表現ではあったが、それでも炎山は驚愕した。
花より団子―もといカレーな少年がそんな感情に至るなど、一ミクロンも思っていなかったのだ。
「・・・お前、それ――」
つい声を出して問い正しそうになったが、口を閉じ首を緩く横に振った。自分が言うべき事では無いと判断して。
「―いや、自分で解れ」
「はぁ!?何だよソレ!」
勿論熱斗は非難を少年に浴びせるのだが、これ以上今の件について何も言う気が無いのでだんまりを決め込んだ。






あんまり熱斗がそれらしいのでメイルちゃんに悪いけどくすりとしましたv
熱斗はそういうどんくさい(失礼)とこが好きです。可愛いヨネ♪
みかぜさん、ありがとうございました。