大嫌い



何が嫌いってまずあいつの顔。
無表情で何考えてるんだかわかんなくって、
感じ悪いったらありゃしない。
厭味ばっか言うあの口の悪さも最低ね。
人を見下げた態度だって全く馬鹿にしてるわ。
第一、パパの会社を三流呼ばわり!絶対許さないんだから。
どういうわけだか女の子に人気があるのよ、そこも腹が立つわ。
ファンクラブまであったりして、もう信じられない!
天才だとか仕事もやり手だとか、
ネットセイバーとして大人顔負けの活躍してるとか
あいつを褒め称える事柄が多すぎるのが嫌になっちゃう。
私にとってはただの厭味で気障な奴なんだから。

・・・・どうして私のこと助けてくれたの・・・
大事なN−1グランプリの試合に間に合わないところだったのに
止まったエレベータから脱出するあの長い梯子を一緒に昇ってくれた。
泣いていた私を上まで吊れて行ってくれて、落ちそうなところを救ってもくれた。
昇りきれた後も腰を抜かしてへたり込んだ私を気遣ってくれた。
早く試合に駆けつけたかったでしょうに。
どうして優しいのに優しくない振りをするの。
嫌い、嫌い、大嫌い。きっと私以外にだって優しいのよ。
困ったときいつも私を助けてくれるのは何故なの。
私のことなんて思いっきり馬鹿にしてるくせに。
あきれた顔して私を見ないでよ、すごく辛い。
からかわないでよ、胸が痛い。
私が思う分の三分の一も私のこと思ってないくせに。
わかったような顔して、何様のつもりなの。
ああ、あいつが嫌いで嫌いで頭が変になりそう。
胸が痛いし苦しいし、頭だってぼうっとするわ。
全部あいつのせいよ、許せない。
どうすればこの苦しみから解放されるのかしら。
あいつをどんな目に合わせれば気が済むんだろう。
炎山、私あの日からあなたのこと思わない日はないわ。
いつかきっと思い知らせてやるんだから。
この私をこんなに悩ませた罪は重いのよ。
だけどいざ顔を見ると何にも思うようにできない・・・
「だいっきらい!」
それしか言えないの。
溜息ばかり増えてゆくわ・・・



遇えばあいつは何時でも怒ってる。
むきになって顔を上気させ赤く染まる頬。
子犬が吼えるみたいにまくし立てる。
黙ってればそれなりだが怒った顔も悪くない。
口を開けば憎まれ口で子供だなと思う。
それはそれは強力なトラブルメーカーで
厄介事そのもののような奴だが憎めない。
たまたま助けた結果となる事件が続いたが
俺もそんなに暇なわけじゃないんだ。
いつでも駆け付けてやれるわけではないんだぞ。
少しは大人しくしててもらいたいものだ。
首に鎖でも付けて置きたいくらいだ。
威勢の良い態度の奥の少し素直な本当のあいつ。
それを知っているのはもしかしたら俺だけかもしれない。
そんなことをふと考えることがある。
もう少し大人になればあいつももっと素直になるのだろうか。
涙を浮かべたあの無防備な顔を思い出すたびに
頭の奥で何かが鳴り響く気がする。
あいつが俺を嫌いだと言うたびに
まるで好きだと告白されてるように思える。
俺がおまえに優しくなれる日まではそのままでいて欲しい。
そしていつかまたあの素直な微笑みを見せてもらう、俺だけに。








炎やい小説第2段です。前作をなんと読んでくださった方があって嬉しくて書きました。
やいとちゃんじゃないですけど感激で涙出そうですよ。ありがとうございます。
炎やいがほんとに好きです。恋人未満で当分じゃれあっててほしいですね。
にしても今回もかなり甘いですね。でも糖分でいっぱいの炎やいはまだまだ書けます。