「味見」短文集



「味見」・・・・・@


りんが驚くのも構わず 着物を剥がす
両腕もどけてゆっくりと舌を這わす
困惑のりんは柔らかく 美味い
此度は味見 味わい尽くすは何時頃か




「味見」・・・・・A


傍らで無邪気に遊ぶを眺めるうち
ふとその成長を確かめたくなる
化けたまま近づくと嬉しげに寄ってくる
鼻先で着物を剥ぎ、舌で味を確かめる
”美味い”
眼を零しそうに驚く様は可笑しい
早く味わい尽くしたい
りんの味は良い 思う以上に




「味見」・・・・・B


少しばかり唐突で驚かせた
だが私にとっては突然ではない
触れるだけでは済まなかった
そこまでは至るまいとタカをくくった
だが
味見は腹の減ったときは
よけいに欲を増すだけだ
身に染みたがもう良い
これからはいつでも思うまま
味わうことと決めた
少々耐えた後も格別なのだが




「味見」・・・・・C


「殺生丸さま、味見して!」
りんが台所から小皿を片手に出迎えた。
「何だ・・・」
「初めて作ったの。どうかな?」
「着替えくらいさせろ・・・」
「あ、ごめんなさい。お疲れさまでした。」
しゅんとするのは待っていたからだろう。
覚めるから後でもう一度温めてから味見してねと言った。
そして小皿のとろりとした液体を小指に絡めて舐めた。
音は立てなかったが聞こえたような気がした。
その指を思わず掴んで舐めた。
りんが飛び上がる。
「な、後で味見するんじゃなかったの?!」
「旨そうだったから。」
「それならりんが舐める前に味見してくれればよかったのに?」
「おまえが旨そうに舐めるからだ。」
「ええ?ちょっといやしんぼさんだね?!」
「腹が減ってるからな。」
「じゃあ、早く着替えて来て?殺生丸さま。」
「ああ・・・手伝え。」
「え?お着替えを?!」
黙ってエプロン姿のりんを自室へ伴った。
何度味わっても旨さは変わりないな。